トラウマと12ステップ

過去どんなで何があって、今は。12ステップの回復。個人の物語

お知らせ

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サイトを公開しました

このサイトを本日、2021年6月4日に公開しました。

このサイトは、非致死性トラウマの後遺症に苦しんできた僕が、「12ステップ」のプログラムにまつわる経験や、回復のために集めた情報をコンテンツ化して発信する個人ブログです。

12ステップのプログラムとは

このサイトがテーマとしている「12ステップ」は、そもそも1930年台以降にアメリカで広まった、深刻なアルコール問題からの回復プログラムです。命懸けの闘病生活のなかで、その患者たちが、互いに支えあいながら、自分自身の内面を探り、新しい生き方を見つけることで、問題を克服できることを、身をもって証明したのです。現在では、世界各国で数百間人の人たちが、このプログラムに取り組んでいるそうです。

また、この「12ステップ」は、アルコール問題に限らず、薬物依存、ギャンブル中毒といったアディクション、加えて摂食障害、アダルトチルドレン問題、感情情緒的な問題をもつ人たちによっても、活用されるようになっています。

このプログラムは、いったいどういうもので、どう使えばいいのか。このサイトで詳しく、ご紹介していきます!

12ステップがトラウマに効くのか?

この「12ステップ」が、トラウマに効果があるのか。僕の場合、通院していた精神病院の主治医の勧めで、2019年に取り組みをスタートしました。「12ステップ」という言葉すら聞いたことがありませんでしたし、実は、自分がトラウマの影響を受けているということすら自覚がなく、何もかも分からないことばかりのスタートでした。

この「12ステップ」は、例えば、アルコール問題を抱える人たちでつくるグループの「アルコール・アノニマス(略称AA:読みエーエー)などで、希望するメンバーが取り組んでいます。日本でも、全国各地で、こうしたグループ(自助グループ、自助会などと呼ばれています)が活動しており、僕も、こうしたグループの活動に参加することで「12ステップ」を始める機会を得ました。

トラウマを抱える人たちのなかには、自分自身の感情が理解できなくなってしまい、それゆえに感情のコントロールが効かず、怒ったり、恐れたり、自分を責めて抑うつ的になったり、苦しむ方が少なくないそうです。そして、人生に関する考え方や世界の見方も、非常に暗くて悲観的なものになり、生きる希望や、生きる力を失っていくー。そのため、アルコールといったアディクションや情緒的な問題を併発するケースが多いということです。僕も、そうでした。

主治医は、僕が、自助グループに通い始めたことに、とても喜んでくれました。「自分のトラウマの記憶を話すことで、トラウマの影響を徐々に減らしていく。うっすらと、瘢痕が残るぐらいで、心の傷は癒える」と主治医は言いました。そして、実際、そのとおりになってきました。半年、1年、2年と時間を経るごとに、変化がより力強く感じられるようになってきました。

この2年間で知りえたことを全公開

このサイトでは、僕が、2019年から「12ステップ」に取り組んで、経験したことや、集めた情報を、どんどん公開していきます。ただし、このサイトを公開した現時点で、僕は、全部で12あるステップのうち、8番目のステップに取り組んでいる状態です。このプログラムのすべてを知っている、というような偉そうなことは、けっして言えません。自分が実際に、見たり、聞いたり、読んだり、体験したことをお伝えます。それが、ごく一部のことにすぎないことは承知の上です。

そして、僕が特に注意しているのは、トラウマの問題に向き合うとき、自分の意志や考え方ばかりをよりどころにすると、せっかくの回復の端緒を逸してしまう恐れがあることがです。僕は、あるキリスト教の宗派の神学校で教鞭をとった経験のある老牧師と、主治医から同じような忠告を受けました。

「的外れ、独りよがりは、避けなければならない」というのが、主治医の言葉でした。

一方、老牧師からは「キリスト教の聖書では、的外れのことを罪(ハマルティア)と呼ぶ。経験的に理解することで、的外れを避けることができる。知識として知る」と教えられました。なんでも、聖書では「知る」という動詞はラテン語で2種類が使い分けられており、ひとつは知識として、分析的に知る、という意味で、もうひとつが、経験的に知る、という意味で用いられているということでした。特に、この後者が、「心の問題から回復しようとする者にはカギとなる」。そんな話をとても熱心にしてくれたので、よく覚えています。

僕はキリスト教徒ではありませんし、このサイトは、何ら宗教的な意図があって公開されているものではありません。

ただし、老牧師の話をもう少し。「それでは、牧師さんは、この聖書を、どれくらい経験的に理解したのですか?」と私は質問しました。少し考え込んでから、牧師は答えました。「いいとこ、5%ぐらいだと思います」

経験的にご理解いただくために

この回復のプログラムの理解は、受験勉強で、丸暗記するような仕方ではけっしてなく、それぞれの意味内容が、自分の過去の経験としっかりと関連付けられていて、情報が自分の血となり、肉となるような実感を伴って、理解され、思い出されるようになることが、大切なのではないかと思っています。

ですので、このサイトを回復のために実践的に、ご利用いただく方には、「12ステップ」のプログラムを、まさに実践されようとしていること、あるいは、すでに実践されていることが必然的に前提になってくるかもしれません。おそらく、このサイトのコンテンツを読んでいただいても、プログラムに縁遠い状態ですと、「なんのこっちゃ?」と、ご理解いただくのが、困難になると推測しています。それは、自分も、そうだったからです。

経験的な理解という仕方自体が、実は、隠された大きなテーマなのかもしれません。アディクションの治療では、いわゆる心理的な否認が、治療の大きな障壁となりますが、経験的な理解は、私たちが、この否認を打ち破り、さらには、あるがままの世界を感じて経験するときに、私たちの頼もしい助っ人となってくれるはずです。

ですので、このサイトでは、「12ステップ」を経験的にご理解いただけるように、可能な限り配慮や工夫をしていきたいと思っています。

「そんなこと言っても、12ステップの自助グループなんて、通えっこないよ」と、難しさを感じる方がいると思います。ただ、コロナ禍で外出や会合が制限されている今の世相を受けて、インターネットを介して「12ステップ」に取り組む世界中の人たちがつながりを持つようになってきたという、ダイナミックな変化もあります。やる気になれば、方法はある、ということも、このサイトでご案内できればと思います。

このサイトを訪れていただいた方の、お役に立てば、大変うれしく思います。